世帯年収850万円で住宅ローン5,000万円は大丈夫?「借りられる額」と「返せる額」の絶対的な違い
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執筆者
一般社団法人 住宅購入支援協会 代表理事
住宅購入カウンセラー
ファイナンシャルプランナー(FP)
宅建業従事者
小日向 邦夫 が執筆しました。

住宅購入は、多くの方にとって人生最大の買い物です。特に、住宅ローンを組む際には、「この金額で本当に大丈夫だろうか」という不安がつきまとうものです。
今回は、世帯年収850万円で住宅ローン5,000万円をご検討中と仮定して、返済計画の安全性を判断するための具体的な基準と、専門家が重視するポイントを徹底解説します。
あなたの返済比率は?安全目安は年収の「20%」
金融機関が設定する審査上の返済比率(30%〜35%)と、私たちが推奨する「無理なく安全に返済を続けられる目安」は異なります。家計にゆとりを持たせるための安全な返済比率は、年収の20%前後をおすすめします。
【世帯年収850万円の場合】
- 年間返済可能額(安全目安20%): 850万円 × 0.20 = 170万円
- 月々の返済可能額: 170万円 ÷ 12ヶ月 = 14.17万円
この「月々約14.17万円」が、年収850万円の世帯が生活を圧迫せずに返済できる上限の目安です。
次に、具体的なローンの返済額を見てみましょう。
【住宅ローン5,000万円(金利1.0%、期間35年と仮定)の場合】
- 月々の返済額: 約14.1万円
5,000万円の月々の返済額(約14.1万円)は、安全目安の返済可能額(約14.17万円)にギリギリ収まる水準です。この数値から見ると、返済比率20%という安全基準ギリギリで、「借り入れは可能」と判断できます。
「借りられる額」≠「返せる額」— 返済比率の盲点
数値上は「大丈夫」と見えても、これはあくまで年収と金利という一律の条件に基づいた計算に過ぎません。住宅ローンの失敗事例の多くは、この「借りられる額」と「返せる額」の混同から生じています。
なぜ、返済比率20%でも危険が潜んでいるのでしょうか?
それは、家庭ごとの「生活費」「将来のイベント支出」「老後資金計画」が、この計算に一切含まれていないからです。毎月の返済額に加えて、お子様の教育費、車の買い替え、万が一の病気や失業といったリスクに対応できる「余力」が残っているかが重要になります。
【住宅専門FPの視点】安心を確実にするためのロードマップ
住宅専門ファイナンシャルプランナーとして、皆様にお伝えしたいのは、「ゆとりある返済計画」が、安心して住宅購入するための秘訣だということです。
5,000万円の借り入れが妥当かを最終判断するために、以下の3つのステップを踏んでください。
1.「ライフプランシミュレーション」の実施
単なる収支計算ではなく、家族の未来図を織り込んだシミュレーションが必要です。特に、以下の3点を明確にします。
①教育費の把握
お子様の進路(私立・公立)の決定時期や大学入学のタイミングなど、教育費の支出が最大になる時期に、ローンの返済が滞りなく行えるかを確認します。
②変動する金利への耐性
現在の低金利は非常に魅力的ですが、変動金利を選択する場合は、金利が2%や3%に上昇した場合の返済額を試算し、それでも家計が破綻しない「金利耐性」を確認します。
③無理のない貯蓄ペースの確保
住宅ローン返済と並行して、老後資金や不測の事態に備えるための貯蓄が滞りなくできるかを確認し、もし貯蓄ができない場合は、借り入れ額の再検討が必要です。
2.見落とされがちな「隠れコスト」の把握
月々のローン返済額以外に、以下の住居費を必ず加算して試算してください。
- 固定資産税・都市計画税: 年間で数十万円かかります。
- 修繕積立金・管理費(マンションの場合): 将来的に値上がりすることも考慮が必要です。
- 火災保険料など、今後必要となるその他のコストも考慮に入れる必要があります。
これらのコストを加味した上で、月々の合計住居費が安全な目安に収まるかを確認する必要があります。
3.専門家による総合診断
家計の収支、ライフプラン、リスク耐性を総合的に判断するため、専門家への相談をお勧めします。第三者の視点から、見落としがちなリスクを洗い出し、より安全な資金計画を立てることができます。
まとめ: 住宅ローンは「安全」という名の保険をかけて
世帯年収850万円で5,000万円の住宅ローンは、金利1.0%の条件下では、統計的に見れば「借りられる額」です。しかし、私たちが重視するのは、「人生を豊かにしながら返せる額」です。
住宅ローンに「安全」という名の保険をかけること、これが住宅専門FPからの最も重要なアドバイスです。
ご自身の未来の支出とリスクを正確に把握し、最も家計が厳しくなる時期でも笑顔で暮らせる資金計画を立てるためにも、ぜひ一度、私たちのような専門家にご相談ください。余裕のある借り入れこそが、夢のマイホーム生活を末永く楽しむための確かな土台となります。
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